ジルは、そこまで思わず一気に考えてしまって、そして、自己嫌悪に陥った。
 結局のところ、ヤキモチを妬いている自分に。しかも、あんな男に。
 自分も、あの男の存在を無視できたらいいのに、と思った。
 もう一度見下ろすと、所々で、発光している水面が見て取れた。
 夜光虫。海岸で、ウイコに、見せることができるはずだった。見たことが無さそうだったから、今夜のような大発生の海を見たら、きっと、すごく驚いただろう。風もほどほどにあって、波もそこそこ高そうだから、もしかしたら、高波が光っているのだって見せれたかもしれない。
 と、ウイコの悲しそうな表情を思い出してしまった。
 じっと、何か言いたげにジルの方を見ていた瞳を。
 どうしようもなく、胸の奥の方が疼く。
 嫉妬心から、思わず言ってしまったことを、今更ながら、激しく後悔していた。もちろん、本気で言ったわけではなかった。けれど、きっと、ウイコは本気で受け止めただろう。あそこまで言うことはなかったのだ。なぜ、あんなにひどいことを言えたのだろう。
 ……ウイコは、僕のことを、どう思っているのだろうか。 
 僕はウイコのことを、どう思っているのだろうか。それさえ、曖昧だった。