翌朝の朝食は、ほどほど、といった感じ。
 シリアルにミルクを掛けて、ヨーグルトも食べた。
 ウエイターのガイも、コーヒーを注ぎに来たとき、いつも通り食欲旺盛、とまではいかないものの、わたしの目の前にある、皿の上のシリアルを見て、少し安心したように微笑んでいた。
 昨夜のツアーのお礼を言うと、照れたように笑った。
 もしかして、あのツアーにわたしが誘われるように仕向けたのは、彼だったのかもしれない、とふと思って、思わず、ガイを振り返った。彼は、いつもと変わらず、愛想を振りまきながら、コーヒーを注ぎに回っていた。
 わたしは、ぼんやり、強い日差しを反射するアンダマン海を見詰めながら、コーヒーを飲んでいた。相変わらず美味しいコーヒー。何と言う種類なのだろう。日本に帰るときには、たくさん買って帰らなくちゃ。焦げた香りが強いけど、口当たりはまろやか。そのギャップが不思議だった。タイコーヒーっていうのだろうか。
「あの……」
 声を掛けられて、はっと我に返ると、ガイが、そこに立っていた。
 ニコッと笑って彼を見詰める。すると、彼も、安心したように、ニコッと笑った。
「今日、予定が無いようでしたら、コシキマッサージ、どうですか」
 コシキ……マッサージ?
 首を傾げる。何だろう。
「タイに古くからあるマッサージ法です。もともとは、僧が施すマッサージだったそうです」
「ああ、タイマッサージのことね?」
 彼の説明で、やっと合点がいくと、わたしは、ちょっとそれに興味を惹かれている自分に気付いた。最近、何だか身体がシャンとしないし、気分も乗らないし、疲れているみたい。マッサージしてもらったら、少しは回復するかも。
「もし行くでしたら、ボクが街まで送ります。そして、マッサージが終わったら、迎えに行きます」
「本当?」
「ええ、良ければ。ちょうど、今日、街へ出る用事があるので」
 わたしは、頷いて、早速彼とプランを立てた。