わたしが、彼らの楽しみに水を差してしまっている。そう思うと、申し訳なくて、わたしは、慌てて立ち上がった。
「いいの、わたし、一人で帰るわ」
「でも……」
「平気よ、まだトゥクトゥクも拾えるし」
 と言っていると、脇の方で、一人、マリが名刺と携帯電話を取り出して、今にもどこかへダイアルしそうになっている。嫌な予感がして、わたしは、彼女の手元を制した。
「待って、それ、誰に?」
「……ガイさん……だけど? いつも、彼言ってるじゃない、困ったことがあったら何でも言ってくれ、って」
 マイペンライと言いながら、浅黒い肌に真っ白い歯を見せて笑う、ガイの顔がよぎる。
 わたしは、慌てて首を横に振って、
「だめよ、それは。こんな夜中に、起こしたら悪いわ。どうってこと無いのに」
「だって、一人は無理よ」
「平気、平気。外へ出たら、空気も違うでしょうし」
 数分間押し問答して、結局、押し切る形で、わたしは一人で帰ることにした。
「大丈夫、一人で? もしなんだったら、僕が送るよ」
 わたしの表情が、笑いながらも未だ硬いことに気付いたのか、そのうちの一人が、親切にそう言ってくれた。けれど、丁重にお断りをして、ジュースの代金とチップをテーブルに置いて、足早に店を出た。