夕方、時間通りにロビーへ行くと、カップルが2組、家族が2組、同じツアーに行くらしき人達が既に待っていた。全員日本人。とそこへ、あのウエイターが、手に名簿らしき物を持って現れた。
「揃いましたね」
 ニコニコしながら彼はそう言うと、車寄せにつけられた、マイクロバスへ、わたし達を案内した。
「……あなたが、案内人なの?」
 わたしは、バスに乗る前に、そう話しかけてみた。すると彼は、元気よく頷いて、
「これも僕の仕事です」
 と言った。浅黒い肌に、白い歯。それを見たら、何だか安心して、わたしは、思わず微笑んだ。
 バスの中で、彼は、皆に、島の魅力や特徴、そしてこれから向かうプロンテープ岬のことを、説明してくれた。思ったよりも日本語ができて、そして、思ったよりもリーダーシップがありそう。それに、わたしだけではなく、他のお客にも色々と親切にしているらしく、皆、彼と面識があるようで、気軽に彼に話しかけたり、彼をおちょくって困惑させたりすることもあった。
「あの白い像、ここの岬に祀ってある神様です」
 バスを降りて、夕陽を見るベストポジションを探し歩いている途中、彼は、わたしに、空を指差しながらそう言った。
 ふと見上げると、薄いブルーの空に、白くて綺麗な仏像のようなものが見えた。
「この島のあちこち、神様が祀ってあるの、見ましたか」
 わたしは、頷いた。パトンの中心街にも、祠のようなものがあって、そこに象の像が祀ってあったのを、覚えていた。それには、色とりどりのレイが掛けられていたっけ。
「女の子の兄弟の像は?」
 わたしは、首を横に振る。