「……おかわりする?」
 ジルは、わたしの方を向いて頬杖をつきながら、微笑んでいた。
 わたしは、ふと恥ずかしくなってきて、ううん、と首を横に振った。
 辺りは、すっかり真っ暗。ウエイターが、キャンドルをもう2つ、増やしにきてくれた。ジルは、ついでに、冷たいお水をオーダーした。
 そして、いつの間にか脱いでいたジャケットを、わたしのむき出しの肩に、そっと掛けてくれた。また、涙腺が緩む。嬉しいのに。幸せだと感じたのに。それなのに、その嬉しい、や、幸せ、が、わたしの切ない、に直結しているみたいだ。今夜は、かなり変。そう思いながら、ニコッと笑って見せたはず、が、不意に、目から、涙の大きな粒が、転げ落ちた。泣き笑い。間違いなく、わたし、変な顔だ。慌てて、バッグからハンカチを出そうとするのに、うまく手が動いてくれない。
「ウイコ……?」
 ジルの、驚いた声。わたしは、咄嗟に、へへへ、と笑ってみせる。けれど、同時にまた涙が零れ落ちるから、何だか逆効果。奥歯を噛み締めてみるけど、余り関係ないみたい。
 俯いて、バッグをゴソゴソしていたら、急に、強く、抱き寄せられた。 
 一瞬、息が止まるかと思った。
 あぁ、もうだめだ、と思った。
 好き、な気持ちが、とめどなく流れ始める。洪水のように、胸の中を、たちまちいっぱいにしていく。でも、とてもじゃないけれど入りきらなくて、それは、すぐに溢れ返ってしまって、涙となって流れ出す。