「毅からメール。今日は無理だって…」


「じゃあ、純と紀子さん二人きりなんだね」


君代は懸命にはしゃいで強がってる。それは紀子も同じ。


オレはこの世で、最低のバカ男で、二人が庇ってくれているのはなんと、オレなのだ。


二人を傷付けてるオレを必死になって守ってくれてる。
しかもオレには、もうどちらを選ぶべきかすら分からなくなっていたのに、
選択を迫った紀子自身が、君代の前で身を引いた。


なのにオレはまだ、紀子を引きずっている。




「受験頑張って!君代と付き合ってたから落ちたとか、絶対ダメだからね」


返事も出来ない。


「君代ちゃん気になるの仕方ないんだよ、私今日帰るから」


「ダメダメ!紀子さんだって受験頑張って下さい。…純、予備校終わってから寄れたら…うちに来て。待ってる。だから私、もう帰る」


二人置き去り。





オレは紀子を促して、予備校へ向かった。


紀子はまだオレを好きなんだ!


それを知っているのに、知らない事として二人で涼しい顔で講義…なんて、無理だ。


予備校は屋上は開かないが階段のホールは空いている。
そこへ紀子の手を掴んで連れていくと、
壁に押し付けキスをした。


応える紀子。


紀子の細い身体を抱きしめ、何度も口づけた。


暫くして、そっと身を離し、
永遠のさよならのキスをした。