――金曜日の夕方、仕事を終えて帰ろうとした時、オーナーに声をかけられた。


「小堀さん、お願いがあるんだけど…」


顔から人の良さがにじみでているようなオーナーが、本当に困ったように眉をよせている。


「なんでしょう?」


オーナーはめったにお店の方には顔をださない。


そんな人が頼みごととは、よっぽどのことのような気がする。





「…実は…荘司くんのことなんだけど…」


「…ソウシ…?」


耳慣れない名前に不審の色を浮かべる。


慌ててオーナーが続けた。





「嶋村くんのことだよ!!嶋村荘司」


「――――…え……」


不覚にも、ドキッとしてしまった。