「え? あ、ごめん」


「どうしたの? 急にぼーっとして」


「ううん、なんでもない」


一瞬、麻里子は“彼女”のことを思い出しかけていた。


やっぱり、来るんじゃなかったな。


みんなと顔を合わせているだけで、昔のことを思い出してしまう。


それは、懐かしいと笑い合える思い出ばかりじゃない。


よみがえる思い出のなかには、“思い出してはいけない”過去もある……。