しかし、


歌をうたい終わったあとも、何も起こらなかった。


遠くのほうで別の部屋のお客が騒ぐ声が聞こえる。


とくにかわったところはなにもない。


「なにも、起きないね……」


恐るおそる、誰かが言った。


その言葉をきっかけに、ザワザワとみんなが話し出す。


なにも、起きない……。


当たり前か。


時枝絵里香の名前が出たから身構えてしまったが、


冷静に考えてみたら、死んだ人間を呼ぶなんてこと、できるわけがない。


麻里子はようやくほっとした。


加藤たちもなんだか拍子抜けをした感じだった。