その頃には、もう誰も、時枝絵里香を同じ人間としては見ていなかった。


それほどクラス全員からひどい仕打ちを受けていた。


麻里子はそれがいけないことだってわかっていたのに、注意することができなかった。


「もうやめようよ」


たったそれだけの言葉を、みんなの前で口にする勇気がなかった。


へたなことを言って、自分がイジメられる側にまわりたくない。


関わりたくない。


あたしには関係ない。


彼女が「助けてほしい」というサインを必死に出していたのに、


麻里子は見てみぬふりをした。


いつか、
誰かが、
注意するだろうと、
人任せにして。


でも……


誰も注意しなかった。


イジメは……


なくならなかった。


そして……


時枝絵里香は死んだ。