ふと気付くと、いつのまにかまわりの視線は麻里子たちに向けられていた。


「な、なんでもないよ」


奈津美が慌ててみんなに笑顔を作る。


でも、もう遅かった。


「いま話してたのって、席がひとつ多いってことだろ?」


静寂を破ったのは、当時学校1の不良であった加藤明。


大人になったいまも、あの頃の面影が残っている。


彼はニヤリと笑うと言った。


「そんなの、みんなとっくに気付いてたよ」


「え?」


「気にはなってたけど誰も言えなかった。何かの間違いだって思いたかった。そんなとこだろ?」


加藤明はニヤニヤしながらみんなに声をかけた。


どうやらその通りらしい。


みんな黙っていた。


加藤はなおも続ける。


「実はさ、予約32人から33人に変えたの、オレなんだよね」