「同窓会が初まってからずっとあの席だけ誰も座ってないの。誰か来てない人っている?」


そう言われても、麻里子にはわからない。


部屋のなかをぐるっと見渡してみたが、当時のクラスメイトたちは全員いる気がする。


そのときだった。


「みんないると思うよ。私、受付やってたから」


ゆかりの質問に答えたのは受付を担当していた奈津美だった。


奈津美いわく、今日来るはずのメンバーは全員来ているらしい。


でもそうなると、


「じゃあ、あの席って……誰の席?」


ゆかりが言った。


その質問には、誰も答えられなかった。


思い当たる人物がいないわけじゃない。


その場にいる全員が、その人物の名前を口にするのを躊躇していたからだ。


「た、たまたまでしょ。店の人がひと席多くセッティングしちゃったんだよ」


すっかり酔いが冷めたのか、加奈子が笑いながら言った。


しかし、本条ゆかりは笑顔を見せず、首を横に振る。


「あたしたちもそう思いたかったから、さっき店の人に確認したの。でも……」


「でも?」


加奈子の言葉に本条ゆかりは一度頷くと、震える声で続けた。