わたしは、ハンドルに集中しながら、つい何度も、あの場面を思い出してしまっていた。
 その度に、ふと、意識が散漫になりかけて、思わず、首を横に振ったり、拳で、軽く、顳かみを叩いてみたり。
 もし、彼に電話してたら、どうなってたかな。
ぼんやりそう考えながら、テーブルの下で握り合う手を、思い出していた。