玄竜。

だから「ゲンさん」。



それ以来、彼は店に来る度、私を指名してくれた。部下を連れて来ることもあれば一人で来ることもあった。その度に私を呼び、楽しい話を聞かせてくれた。

正直、仕事抜きで楽しい時間だった。必ず私を指名してくれる事も、嬉しかった。
その話の端々で、大阪からの単身赴任中で今は一人暮らしだという事、大学時代はアメフト部でならした事、肩を壊して泣く泣く辞めざるを得なかった事、そして結婚していて子供が二人いるという事…。


楽しい話の筈なのに聞いていて段々と冷めていく自分がいた。

玄さんの事を知りたい。


でも、聞きたくない。

家族の事を嬉しそうに話す玄さん。
どんなに家族を愛しているか、大切に想っているかがひしひしと伝わる。




何故か、面白くなかった。