真夜中だと言うのに月光によって辺りは柔らかな明るさに照らされ、いつも木の葉の陰などにいる彼はその明るさに眼球の痺れを感じた。 「きゃーーーっ」 目下に広がる雲海のような森に、少女は興奮して声を上げる。 視力の許す限りそれはどこまでも続いていて、夜色に染まる木々が何処までもたゆたっていた。 その声に、つい微笑ましく思い、背中の少女に問い掛ける。 「ヒトの子よ。名を何と言う?」 翼を広げ円を描きながら下降する。 「なまえ? えっとね…あれ?」 少女は首を捻る。 「わかんない」