「無理なら途中の山小屋で待っててもいいって言ってたよね」


ちょっと弱気になってそう言うと、陶子さんは微笑みながら言った。


「ええ、構わないわ。
でも、今回は楽に登れるよう、頂上でのご来光はやめて、8合目で朝を迎えて、明るくなってから頂上を目指すから、初心者の涼くんでもたぶん大丈夫だと思う」

「ふうん」

「夜中に登るのは、夏とはいえ、かなり寒いし辛いからね。
ただ、山小屋ではあまりしっかり眠ることはできないと思った方がいいわ。いい環境とは言えないから」

「そうなの?」

「うん。ただ一応2段ベッドの予約は取ったから、床で1枚の布団に2人ずつ雑魚寝っていうのだけは避けたけど」

「え、そんなことあるの?」

「ええ、休前日は混むから、頭と足を互い違いにしてつめて寝るらしいわよ」


まじ?


ちゃんと予約を取ってくれた陶子さんに感謝。


「ただ予約した宿まで行けなければ、急きょ別の宿に泊まることになるだろうから、そうしたらどうなるかわからないけど…」


なんとしても、予約した宿までは頑張ろう、俺は心に誓った。