携帯を握りながらため息をついた私に、ウシオが隣から口を開いた。
「結構かわいいだろ…?サキって言うんだ…。俺と結婚したら、“ハマサキサキ”になっちゃうから笑っちゃうんだけど」
その発言に、ウシオってホント女心をわかってないよなあと思った。
私は彼に携帯を返しながら言った。
「別にいいんじゃない…?名前なんてどうせ記号みたいなもんだし、あんま関係ないんじゃない…?」
「そうかなあ…。だって一生のことだぞ…?やっぱ大事じゃないか…?俺としてもカミさんが変な名前だとやっぱなあ…」
ウシオは携帯電話をしまいながらぶつぶつ言った。
「そんなことないよ…。結婚して名前がおかしくなっても、好きな人と一緒にいられれば、それだけで十分なんじゃないの…?」
私がそう言ってビール瓶を持つと、
「そんなもんかな…」
ウシオはグラスを持って、それを私の方に傾けた。
「…そんなもんだよ」
ウシオのグラスにビールを注ぎ足しながら、私はぼそっとつぶやいた。

