涙が頬を伝った瞬間。
手にしていた携帯電話がうるさく鳴り出した。
トモシが謝罪の電話をくれたのかと思いながらそれを開くと、
ディスプレイには“浜崎潮”の文字があった。
こんなときに何…と思いながらも、私は涙を拭い、とりあえず通話ボタンを押してみた。
「もしもし…?」
〈あ、マユコ…?俺、俺!〉
相変わらず脳天気そうにしゃべるウシオに、私は苛立ちを露に対応していた。
「あのさ…、オレオレって、オレオレ詐欺じゃないんだからそういうのやめたら…?いい大人がばかみたいだし…」
〈あれ?怒った?ごめん…〉
「…で、今日は何…?」
〈ああ…、劇団の連絡網なんだけどさ、急遽今日の練習場所が変更になったから、急いで次の人に回してくれってガンさんが…〉
「あ…、ごめん…。私、今日と明日は練習休むつもりでいたんだ」
〈えっ、そうなん?〉
「うん…。だから悪いんだけど、私の次の人にもウシオから回してもらえる…?」
〈……〉
急にウシオが黙りこくった。

