ウシオに言いたい言葉をガンさんの友達に伝えると、
彼女は最初難色を示していたけど、
私がウシオとのこれまでを全て打ち明けると、
簡単に同情されて“トーコ”のセリフを変えることをあっさり認めてもらえた。
ガンさんの友達が台本に新しいセリフを書き込んでくれた後、
私はそれを急いで頭にたたき込んだ。
“トーコ”のセリフを変えたことは、誰にも打ち明けないでおいた。
誰かに言ったらきっと混乱を招いて阻止されるだけだ。
私はガンさんの友達にもセリフを変えたことを口外しないよう念を押した。
その後。
開演時間の少し前まで、私達はガンさんに言われたシーンを何場か練習した。
そのときもウシオは私と目を合わせようとしなかった。
あんな手紙まで書いておいてなんなの?
と思ったけど、考えてみればもともとウシオは理解不能な人間だった。
仕方ないのかと思い直し、私は変更したセリフを再確認すると、
自分にとってこの劇団の引退公演になるだろう本番を迎えた。