次回公演の練習が始まった後。
ウシオとふたりで会ったときに、彼はふざけるように言った。
「台本には書かれてないけど、アイダとトーコが抱き合うシーンで、俺、トーコにキスしちゃおうかなあ」
「は…?そんなことしたらガンさんに殴られるよ」
私が突っ込むと、
「冗談…!たぶんサキも観に来ると思うし、そんなことできないって…!」
ウシオは苦笑いした。
ウシオの話には、そんなふうに時々サキさんの名前が出てきたけど、
未だにふたりが別れたという話は聞かせてもらえていなかった。
それについてたずねてみると、
「ああ、あいつが俺と別れたくないって言い張っててさ…。まだ少し時間がかかりそうなんだ。ごめん」
そんなふうに濁された。
もともとウシオの言動には理解不能な点が多かったけど、
そんな言葉を聞かされるたびに、
私はやっぱり“男はそう簡単に信用できない生き物なんだ”と確信するようになっていた。
…そしてその考えが間違っていなかったということが、
悲しいことに後日サキさんによって証明されてしまった。

