「ま、ウシオの彼女を妬かせることになるかもしれないけど、そのへんは役者の妻になる身として、彼女には割り切ってもらうからさ」
…信じられなかった。
ウシオが主役を務める舞台で、私がヒロインを演じるなんて…。
それは、絶対に起こりえないと思っていた夢だった。
けど、後日行なわれたキャスト発表で、
ガンさんはホントに主人公“アイダ”役をウシオ、
ヒロイン“トーコ”役を私でいくからとみんなの前で宣言してくれた。
こんな自分がウシオと同じシーンに出られるなんて、起きたまま夢を見ているようだった。
台本のトガキに従えば、私は人前で堂々とウシオに抱きしめてもらえるのだ。
嬉しいような恥ずかしいような、不思議な気分だった。

