「お前、最近練習にもちゃんと出てくるようになったし、そろそろ大きな役をやろうと思ってたんだけど…、マユコ、“トーコ”役はどうだ?」
「えっ…」
それは私にとって、願ってもない話だった。
“トーコ”というのは、この脚本のヒロインだ。
劇団に入って3年近く経つ私だけど、こんな主役級の話がくるのは初めてだった。
「どう?やる気ある?」
「あ…、当たり前じゃないですか…!ぜひやらせてください…!」
飛び上がりたい気持ちを抑えつつガンさんに頭を下げると、
彼は声を出して笑った。
「それはよかった。“トーコ”は子持ちの設定だし、年齢的にもマユコなら丁度いいかなって思ってたんだ」
「……」
またガンさんに年の話をされ、ちょっとへこんでしまったけど、
彼の次の言葉に、私の心はまた喜ばされた。
「主人公の“アイダ”はウシオでいこうと思ってるから、ぜひあいつとお前の息の合ったところを見せてくれ」
「…え」

