ウシオはサキさんと長話をしていて、なかなかこっちに戻ってこなかった。
彼の通る声は刀のように私の心を何度も突き刺し、すぐに大粒の涙を誘った。
…やっぱり私、
ウシオに恋するタイミングを間違えちゃったんだね…。
婚約者のいる男とこんなふうに心や体を合わせていれば、
トモシを好きになったときと同じ過ち、同じ苦しみを繰り返すことになるのは明らかだ。
それってやっぱりダメだよね…。
このままウシオのことを好きでいたら、
私、やっぱり彼を困らせることになるよね…?
私はとっさに立ち上がると、ティッシュペーパーで目と鼻の下とを拭い、
バッグをつかんでドアへと向かった。

