そんなふうに唇を重ねた私達だけど、それ以上体を合わせることはしなかった。
…なぜなら、
キスの最中にウシオの携帯がうるさく鳴って、なんとなくしらけてしまったからだ。
携帯電話をつかんだウシオは急いでバスルームの方へ歩いて行ったけど、
声の大きい彼の話はこっちに全部筒抜けだった。
…電話の相手はどうやらサキさんらしい。
ふたりは明日、一緒に結婚式場へ行くことになっているようだ。
披露宴の打ち合わせでもするんだろうか…。
時々聞こえてくるウシオの声を聞きながら、私は再び惨めな気持ちになっていた。
…ウシオと心が通じ合えた今、
本当なら彼と付き合えてもおかしくないのに、
彼に恋するタイミングや、
告白のタイミングがずれてしまったせいで、
私は彼を手に入れることができないのだ。
ほんの少し判断を誤っただけで、
チャンスは早足で逃げてしまったのだ。
…今頃後悔してももう遅いけど。

