サンダルをひっかけ急いで外に出ると、
アパートの階段を下りて行くトモシに向かって、私は大声で叫んでいた。
「何よ…!ちょっとイイ男だからっていい気になんないでよねっ…!あんたなんか子持ちのくせにっ…!」
人目も気にせずそう怒鳴りつけると、
トモシがこちらを振り向いた。
「知ってるんだから…、私、とっくに知ってたんだから…!トモシ、ホントは子どもがいたんでしょ…?!」
トモシはうつむいた。
「なんでそんな嘘つくのよ…?!なんで最初に言ってくれなかったのよ…?!そしたら私だって、あんたとなんか付き合ってなかったのに…っ!」
言いたいことは山ほどあったのに、
涙が出てきて言葉に詰まった。
再びトモシは顔を上げ、何かつぶやいたみたいだったけど、
私はどんな弁解だって聞きたくなくて、
右足からサンダルを抜き取ると、彼の頭目がけてそれを投げていた。
「バカっ…!トモシのバカっ…!」

