恋敵である彼女に何を言ったらいいものか思案していると、
彼女はひとりでしゃべり続けた。
「あの…、マユコさんのお芝居、味があってとてもよかったです…。出番は少なかったけど、声とかとても聞きやすかったし、観てて思わずひきつけられました…」
「あ…、そうですか…」
「はい」
「それはどうも…」
どうせ社交辞令だろうと思いつつ一応礼を言うと、
彼女は手にしていた花束と紙袋を私に差し出した。
「これ…、ほんの気持ちなんですけど、よかったらどうぞ」
「え…?」
こんなものいただく所以はないんだけどと思いながら彼女の顔を見ると、
「マユコさんにはウシオも世話になってるみたいだし、これからもいろいろとご迷惑をおかけすると思うので、そういう意味でもどうぞ受け取ってください」
と言って彼女は微笑んだ。
「あ…、そうですか…」
結局私は花束と紙袋を彼女から受け取り、
ウシオの彼女は「次回公演も観に来ますね」と言って去って行った。

