太陽が見てるから

「なんで?」


おれが訊くと、翠はとろんとした瞳で睨んできた。


その目付きがやけに色っぽくて、こっちがくらくらした。


翠の瞳に吸い込まれそうで、その視線から逃れるように、おれはまた唇を近付けた。


「死んじゃう」


あと2、3ミリで唇が重なろうとした時、翠が囁いた。


「これ以上しないで。死んじゃうから」


翠の潤んだ目から、夕焼け色の涙がボロボロこぼれ落ちた。


「幸せすぎて……死んじ……」


翠の言葉を遮り、おれは唇を奪った。


口付けの合間に、囁いてみる。


「もっと幸せにしてやる」


そして、もう一度、強く唇を奪ってやった。


だから、おれにかけてみないか。


必ず、宇宙一、幸せな女にしてやる。


おれが手の力を緩めると、口付けをしたまま翠が両手をおれの首に巻き付けて抱き付いてきた。


翠の細い体を覆っていた毛布が、はらりと落ちかけた。


「……あ」


慌てて唇を離した翠が、毛布に手を伸ばそうとする。


その手を掴んで、おれは翠を抱きすくめた。


翠はクスクス笑って、おれに体を預けてくる。


「今日の補欠、強引すぎるって」


似合わないよ、そう言って、翠は唇を預けてきた。


それを受け止めながら、おれは翠を抱き締めた。


「おれだって、普通の男だよ。好きな女、幸せにすることくらいできる」


「何、いきなり」


翠がキョトンとして、おれを見つめた。


「翠」


夕陽が、目にしみる。


1週間、激闘が繰り広げられたグラウンドが、朱色のベールに包み込まれていく。


濃い、夕焼け空。