太陽が見てるから

その使い込まれたグローブの中には、しっかりと白球がおさまっていた。


審判が右腕を大空に突き上げる。


「アウト!」


バックスタンド、3塁側応援スタンド、南高ベンチが一気にわいた。


スリーアウト、チェンジ。


おれは、凄まじく興奮していた。


鼻血が吹き出そうなほど、のぼせ上がっていた。


何かが、違う。


確実に違う。


ナインの気迫が違う。


「夏井」


おれの肩を叩いて話し掛けてきたのは、ダイビングキャッチをした昌樹だった。


「好きなだけ打たせろ。どんな打球でも、全部、おれたちがアウトにしてやる」


脱帽した。


仲間って、すげえもんだったんだな。


最後の夏に、おれは確信した。


仲間ってすげえ。


昌樹のダイビングキャッチが、みんなに火を付けた。


絶対にそうだ。


試合は、序盤から動いた。


1回、裏。


先頭打者は、駿足のイガ。


監督からのサインは、塁に出ろ。


イガはにやりと不気味な笑みを浮かべ、1度だけブウンとバットを振ったあと、打席に入った。


今日まで一緒に同じフィールドに立ち、常に見てきたからこそ、おれには分かった。


イガは、初球から勝負に出るつもりなのだ。


たぶん、いや、きっと。


絶対、だ。


明成ナイン、控え選手、監督、誰もが予想すらしていなかっただろう。


いかにも長打を狙っている構えをしたイガは、その一球をぎりぎりまで引き付け、セーフティーバント。


ボールは呆然とする捕手とハッとした様子の投手のど真ん中で勢いを失い、土に食い込む。


慌ててサードベース付近から駆けてきた三塁手と、投手が顔を見合わせている隙に、イガはファーストベースを駆け抜けた。


「セーフ!」


歓喜にわくおれたちのベンチに向かって、イガがガッツポーズを決めた。


「よし」


監督がしっかりと頷く。


ノーアウト、1塁。