「…健司?」
黙ったままの健司を呼んだ。
答えは返らない。

「健…」
「さちの髪だからキレイなんだよ」
健司がぼそっと呟いた。

「…え?」
あたしは反応が鈍い。正直、健司が何言ったのか分からなかっただけなんだけどさ。


だって急で。健司がそんなことを言うなんて想像もつかなかったからさ。

「だから、ちょっと聞いてくれる?」
健司の声。あたしの髪、一房つかんでそこに額押し付けてるから健司の顔は見えないけど。

伝わるのは、真剣な想い。

「うん。聞いてるよ」

あたしはそれだけ答えて健司の次の言葉を待った。