雨に濡れた顔を軽く拭うようにすると、びっくりして上を見上げた。 いきなり止んだ雨。 それは本当に止んだわけじゃなくて、何か大きな物が頭の上に出来たかららしい。 また"人間"だ。 そう思って僕は逃げようと身構える。 何をされるか分からないから、常にこういう場合は逃げるようにしていた。 …はずなのに、今日の僕はどこかおかしいみたいで、逃げる気にならなかった。 優しい人に会ってしまったからかもしれない。 また優しくしてもらえるかもしれない、なんて…そんな期待しても無駄なのに。