なぜ、脱走できたのか分からない。


 なぜ、こんなことになったのか分からない。


 だけど、ギルは必死に走っていた。


 司法官と呼ばれる大人が自分を連れ出した。


 牢獄から連れ出し、これから処刑を行うと言ってきた。


「勇者の可能性があるものは、若いうちから、摘み取っておかねば、魔王様復活の際に妨げになる」


何を言っているのか、よく分からなかったが、とりあえず、その目がとても恐ろしく、とても、敵意に満ちており・・・。


あまりの恐怖の中、気がついたら呪文を唱えていた。


どういう偶然が重なったのか、どういう経緯だったのか、説明しようにも出来るものではない。


だが、気がついたとき、司法官は叫び声を上げながら、火達磨になって転がっており、周りにいる憲兵たちが騒いでいた。


それがさらに怖くなって、逃げ出したのだ。


どうして良いか分からず、パニックの中、逃げ出したら、捕らえようとする憲兵たちの間をすり抜け、城を抜け出していた。


城門が空いていた、門番には捕まらなかった。


アイスラ国に警報がなる。


憲兵たちが走り回る。


「脱走者が現れた!」


「脱走だ!」


 どこからか声が響く。


あ、剣がない。


どうしよう?


憲兵に捕まる。


二件も家を燃やした。


とうとう、人も燃やしてしまった。


逃げられない。捕まる。


殺される・・・死にたくない!!


必死に逃げ惑い、足がもつれても逃げて逃げて・・・気がついたら自分がどこにいるのかを見失っていた。