何もなかった空間に音もなく姿を現した私に二人とも気が付かない。

今までの事を思い返しているのか、これからに思いを馳せているのか興味深いことである。

仕方ないので声を掛ける事にした。

「こんばんはご両人」

「わぁ!」

「きゃ!」

それぞれの驚きの声をあげて二人が私に気付く。

「お二人とも時間には余裕をもって間に合いましたね」

にこやかに告げるとサナエさんが恐る恐る聞いて来た。

「ひょっとしてアナタはコウさんですか?」

「その通りです。しかしよく分かりましたね」

「いえ、お顔の記憶は曖昧なんですが話し方でアッと思って」

「なるほど」