日も暮れた街に、松明を持った兵らが走り回る。

たおやかな星の静けさとは打って変わり、地上は今や焦りと緊張のにぎわい。

大小の荷物、幼い赤子や子供を抱えた人々が、慌ただしく避難していく。

そこは、なんの変哲もない住宅地。

ライストのイメージカラーとも言われる白い石壁の家が並でいた。

家々も機能的、かつ近代的なものが多いため、地価の高い区域でもである。

と、住民がだいぶ避難したかという時だった。

ズガガガガガガン!!

と、それは悪夢のドアノック。レンガのストリートで、円形に火花が走った。

直後、火花の径内が爆砕される。

「来たな」

と、セリーヌが爆風に流される三つ編みを片手で押さえている合間に、少女は現れた。

バックにアイスラの水魔法使いでもいるのか、昼間の火傷の痕はあまり見られない。

が、腕や足、首には包帯が巻かれていた。

その腰にはひとつ、昼間にはなかった袋が提げられている。

今や夜と化した世界に、少女はなまめかしい踊り子としてあった。

そう――

「セリーヌ・ウォン・ドストロフ!!」

爆炎連鎖を操る、業火の踊り子――フーガとファイアルの、ハーフである。