CE-LI-NE

(まだやるというのか……!!)

身構えたセリーヌの予想は、外れた。

少女は、火の玉を自分の周囲、レンガ上を縫い這わせる。

炎はやがてレンガの内側へ潜り――

ばがん。

稲妻直下のような、ひときわ大きく、低い轟音。

震動がセリーヌにまで伝わる。

瞬間、少女の這いつくばる路面が、抜けた。

くり貫かれた路面とともに、血まみれの姿が落ちる。

「なっ!!」

予期せぬ事態に、セリーヌは走った。穴のふちで、立ち止まる。

日の光でかろうじて底が見えた。歪な円に穿たれた穴は、街の下水道へ直結している。

少女は家を崩すのと同じ要領で、路面を穿鑿したのだ。

舞い上がる砂塵と、下水の臭いにだけではなく、セリーヌは顔をしかめた。

こんな、戦法ともいえない撤退を取るとは……





――ぱち、ぱち、ぱち、と、拍手が聞こえた。

振り返ると、ホテルからラグストールがニヒルな笑みを浮かべながら歩いてきている。

「はっは、いやいや、おもしれぇもん見させてもらったな、〝霜刃〟さんよ」

セリーヌは、鞘を腰のベルトに吊り直した。

「貴殿は……多少の助力もできたのではないか? あの状況で静観とは、ファイアルの貴族殿も腰抜けと見えるな」