派手な音がした。大勢の人間が同時に下手くそなタップダンスを踏んだような、品のない轟音である。

セリーヌが溜め息を、そして嘆きを口にするより早く、轟音の元凶がひょこりと本棚の向こうから顔を出した。

のんきに手など振ってくる。

「悪~いセリーヌ、ちぃと落としちまった。あとで片付けとくから怒んな?」

口は開かず、手だけを振り返す。

そのセリーヌの横も、足元も、大量の本が地べたに寝そべっている。

この、なにをどれだけ待とうと飛び上がることのあり得ない蝶は、ジンの仕業である。

バダダダダガバン!! と、また。

「おーやっちまった。はは。セリーヌー」

「今さら気になどせん。好きなだけ荒らせ」

「お、ライストの大佐さまは心が広いな」

冗談にすら聞こえない軽い言葉に、セリーヌは今度こそ溜め息をついた。

ジンに先の約束通り、資料室の使用を許可したのだが……ジンのやり方には目を見張る。

いい意味でも悪い意味でも。

資料室を開けてからまだ半刻ほどしか経っていない。

にもかかわらず、すでに半分ほどの本棚が荒らされていた。

これは、ジンの検索能力、取捨選択、判断速度の優秀さを物語っている。