廊下を歩けば誰もが言うのである。

セリーヌ、セリーヌ、セリーヌ……『あの』セリーヌと、飽くことなく。

そのすべての内容を、セリーヌは知っている。

憧れ、羨望、好意はもちろん、嫉妬や恨みなどもあるだろう。

 ソウジン
〝霜 刃〟と呼ばれるだけに期待される。憧れにされる。羨ましがられ、目標にされ、便りにされ、それだけの振る舞いを求められる。

無論、それに比例して増えるのが、嫉妬や恨み。

ある者は言うのだ。「セリーヌのせいで俺は上にあがれない」と。

またある者は叫ぶだろう。「アイツは自分のことしか考えていない」と。

あるいは笑う者さえいるかもしれない。「あの女は、自分の体を最大限利用しただけだ」と。

プラスも、マイナスも、しかしセリーヌはひとつ、溜め息だけで流す。

〝霜刃〟という二つ名の由来に冷静だのとあるが、その部分は素直に受け取ろうと思っている。

そう、そんな多種多様な声など、セリーヌの神経はさらりと受け流せる。

そもそもが、ただの噂程度、根も葉もない噂も含まれている。

特に、体を利用して、という部分は、よくそこまで想像……いや妄想したものだと、いっそ笑っている。