CE-LI-NE

炎は、セリーヌを突き飛ばした黒猫に命中した。

空中、ズドドドドドドン、と炸裂音が反響し、爆風がよろめいたセリーヌを壁まで吹き飛ばす。

「っ、ジョセフィーヌ!!」

叫んだセリーヌの目の前で、ガラガラと散らばるのは、焼き焦がされた土くれ。

ジョセフィーヌの成れの果て。そこには最初から、命などなかった。

この頭のいい猫はそう、ドーラ貴族が生み出したゴーレムペットなのだから。

「避けないでください」

と、少女の首だけがこちらへ向く。

いったいなにに酔狂しているのか知れないが、その瞳は揺らめく炎のように、危うい。

「あの方を連れていたお二人は、今の一撃でお亡くなりになったんです。アナタも、同じようになるべきなんです」

それはつまり、少年を連れていた大人二人を、すでに爆死させた、ということ。

小さいと言えど、ゴーレムをも粉砕する炎で。

ひゅうううう……

「!」

また聞こえる、微細な風の音。わずかながら流動する空気。

一度見たならわかる。『タネ』は把握できずとも、それは少女の魔法の前兆。