CE-LI-NE

しかしそれでも、少女に敵意は見られない。

同時に、大人二人も、少年も、見られない。

にもかかわらず、

「アナタを、お待ちしておりました」

と少女は言う。薄い唇は、野花のような儚い笑みを浮かべていた。

どこか、タガの外れているような、破顔の色だった。

「お前は、何者だ?」

「あたしは」

ひゅうううう……

と、その時、奇妙な風の音。

「神様の、お使いに参りましたあ」

「神様だと?」

ひゅうううう……

「はい。神様はおっしゃいました。あたしは選ばれたから、使命を果たさなければいけないって」

ううぅぅぅ……

「その使命に則って、あたし、あの方をお迎えにあがったんです。そのためなら――」


ぅぅぅ……

「如何なる存在も排除してよいと、神様はおっしゃいました」

ポ、とそれはなんの前触れもなく、現れた。

赤い、輪郭を揺らす球体の名は、火の玉。

「貴様……!!」

ファイアルの民が操る魔法が、そこに。

剣の柄を握るが、少女のほうが半テンポ早い。