CE-LI-NE

ドアの脇に右肩胛骨を当てるように立つ。

部屋へ身を翻すように飛び込みながら、一気に腰の剣を振り抜ける構え。

が、はやまらない。

セリーヌはそっと二度、左手でドアをノックした。

どくん、どくんと二拍を置いて、

「お入りくださぁい」

柔らかい……いや、むしろ、どこか緩みのある若い女の声が答えた。

あの、中くらいの足跡の主か。

セリーヌは頭の中で予想の配置を入れ換える。

少年をここまで連れてきたのが今の声の女であり、大人二人が部外者。

ならば、大人二人が少年を狙い、声の主がそれを打倒したのか。

なんにせよ、今の応答に敵意は見られない。ドアを開けて、見れば、わかること。

セリーヌはレバー式のノブに手を乗せ、回した。ドアを開ける。

金具の軋む音。些細な風に煽られる埃。

そして室内には、ひとりの少女がいた。

年のころ、十代もなかばという、痩せた少女である。

足跡と声から予想はできる年齢だったが、セリーヌは歯噛みした。

少女は軍服ではない。ノースリーブの、ワンピース。腕やスカートには煤がつき、か細い腕や頬も、薄黒く汚れていた。

   、、
少女は何者か。