CE-LI-NE

セリーヌは一歩、中に踏み入る。

正面には、まるで大衆風呂にある番台のような、形ばかりのカウンター。

角に据えられている花瓶の花は、無惨に枯れていた。

天井に下がった三枚羽の扇風機には、蜘蛛の巣が綿になっている。

床は、セリーヌが歩いた分の足跡がくっきりと、判のように残った。

見てみてが古いばかりではない。

ここ数ヵ月……いや数年、だれも使っていないのは明らかだった。

が、足跡には先客がある。

大人のものらしい大きなものが二つと、子供の足跡。

それから、その中間ほどの大きさのが、ひとつ。

ぽつぽつと階段へ続いていた。

大人二人の足跡は、小さな足跡――つまり少年の護送人のものだろう。

ならば、その中間の、大人でも子供でもない足跡はなんだろうか。

セリーヌは、唾を飲み込む。できる限り音は立てずに進み、腰の剣をいつでも抜けるように注意した。