CE-LI-NE

竜車に揺られること一刻もすれば、城下の端にまで来る。

セリーヌらを乗せた竜車は今、お菓子箱を横に倒したような、ただ長方形の民宿の前に停まっていた。

民宿……というよりも、集団住宅のような見た目。

建物を見上げたルイスが、

「あー、なんか射的ゲぇぇぇぇムっ!! みたいにつっっっまらなーい窓の並びだねぃ。縦に三つ、横に七つ。これ、築三十年は経ってるよぉ~ん。最近のデザインからはだぁぁぁぁいぶっ! 遅れてんなぁ」

と下らないことをぼやいていた。

が、セリーヌはむしろ、その時代遅れな見てくれに緊張する。

いや、軍人として、気持ちが切り替わる。

建物が古いということは、人が寄り付かない。人が寄り付かないのであれば……他人に知られたくないことを、秘密裏に行える。

少年保護の任務は、公にはできない……ということか。

「ルイス、お前はここで待っていろ。すぐに戻る」

「なあーに言ってるのさ? 僕もい」

「ルイス」

「わかった。いってらっしゃい」

強く圧するように言って、降魔師をその場に留めさせる。

セリーヌは正面玄関の三段しかない階段を上がり、ゆっくりと、ドアを開いた。