CE-LI-NE

「ふぅっっむぅ」

ルイスが手を口許へやる。とはいっても、袖の中に隠れた手を。

「なぁんだかそれ、くさいねぃ? なぁんでただの少年をきぃぃぃぃみがっ、迎えに行くんだ~い? みょ~うな話だっっなぁー。そっれっにっ」

パッと、ルイスはセリーヌの資料を奪う。上から下まで、一気にめくり。返す。今ので頭に入れたらしい。

「うぅん、なーんでその少年っ、名前や経歴が書ぁ~いてないのかな? いったい何者だろぉうね~い、その少年んんん」

「さあな」

と答えながら、セリーヌは、簡単な予想ぐらいできていた。

そう、だれでもわかるひとつの確定事項。

この少年には、普通ではない。

少なくとも、一兵士に任せることはできない存在だろう。

『少年を保護せよ』――その短い一文の中に、セリーヌの不安は高まる。

もしも考えている以上に危険ならば、ルイスは途中下車させる。

この任務からも、竜車からも。