本来ならば、セリーヌには受け持ち部隊の訓練が昼からも予定されている。

が、上層部よりの指令とあっては、そちらを優先しなくてはならない。

軍章である獅子の判が、それを強制する。

獅子は生まれた我が子を谷へ突き落とすという。それでも這い上がった子が、誇り高き獅子となる。

この軍章には、セリーヌの信念とする『努力』という意味も含まれていた。だから彼女は、ライスト軍に心血をも注げるのである。

「おいルイス」

と、セリーヌは黒く硬い長靴を踏み鳴らしながら、斜め後ろへ言った。

「なぜお前がついてくる? これは私個人、軍人の仕事だぞ? 降魔師には関係がない。お前はジンと」

「ちっちっちっ、ぬぁ~にを言っちゃってるんだぁいセっリィ? 僕のいるとこにセリィありっ、セリィのいるとこに僕ありっ! きっほん中の基本じゃないかぁ~」

にあにあ~ん、と小走りでついてくるジョセフィーヌも同調した。

どうしたところで、この降魔師は譲らないだろう。

セリーヌは潔く諦めた。