CE-LI-NE

やはりおちょくっていたのか……と、心の中にいるミニセリーヌが頬を痙攣させた。

ルイスは、頭を撫でてくれた愛猫の、顎の下を掻いてやる。

「えーとぉう、彼女名前なんて言ったかなぁん……クラリス? クナサギ? クサラリ?」

「クサナギだ、ルイス。ジン・クサナギ。覚えてやれ」

どことも知れない中空に視線を漂わせ、セリーヌの部下の顔を浮かべているだろう彼へ教えてやった。

「ああ、そっっうだそうだぁ、うんうん、ジぃぃぃン・クっサナギんだぁ」

ルイスが両手を叩き合わせ、その音に驚いたジョセフィーヌが逃げてくる。デスクにひょいと飛び乗ったジョセフィーヌを、邪魔だ、と睨んでみるが、やはり飼い主に似ている、簡単に流された。

ルイスが言った。

「カッッノジョさーぁ、ヘーンなものくわえてるじゃんっ。僕ぁあの煙苦手だねん」

「タバコという例のあれか? まあ、私も好きにはなれん。この世界にはない代物だからな」

ジン・クサナギという女性は、実は、この世界の人間ではない――らしい。

というのも――

数ヵ月ほど前、野外演習の際に彼女が行き倒れているのを、セリーヌが偶然発見した。

その時から、ジン・クサナギは記憶喪失なのである。