CE-LI-NE

「今でこそライストは栄えている。が、人が、物資が流通しなくなったら、国は細くなる。そうなった時、ライスト人である誇りはどこへいく? 胸を張り、私はライスト人だと言えるように努力する。それがひとつだ」

「うん。もうひとつは?」

ルイスがセリーヌの手に触れた。セリーヌはハッとするが、しかし平静を保つ。

ただ少し、首を縮めた。

「もうひとつは……そう、突き詰めればだが、要するに…………守る、べきものが、……あるんだ。そう、大切な……。だから、そのために力が要る。努力せんわけにはいかない」

それから、言葉も、動きもない、ただ呼吸だけが心地よく浪費される沈黙が、幾ばくか。

やがて、ルイスが髪に触れてきた。セリーヌの三つ編みを、掌で滑らせる。少しずつ、先のほうへ。

「セリィ……君はさ、そんなだから努力し過ぎなんだ。だから」

「……だから?」

「だから恋人もできないし似合わない下着を買っ」

「もう一度文鎮を食らうか?」

「ごめんなちゃい」

「ふん」

茶化されて、一気に空気が変わる。なにかをはぐらかしたりうやむやにするのは、この幼馴染みの得意技だ。