CE-LI-NE

「それだけ、大事なことだろう」

つい浮かしてしまっていた腰を落とし、判へ込めていた握力を緩める。

今度はとん、と、小気味よく軽い音だった。

ルイスはソファーの上であぐらを掻き、膝と膝の間に張ったローブのハンモックにジョセフィーヌを招いた。

黒猫は喜んで乗っかり、丸まる。ところが意地悪な主人に撫でくられ、腹を上向きにさせられた。腹を撫でられるのも気持ちいいのか、天晴れな脱力ポーズである。

もうどうにでもしてぇという無防備なジョセフィーヌをいじりながらのルイスは、暗い調子だった。

「セリィはさ……がんばり過ぎだぞ? もう少し気を緩めてもいいじゃないか」

普段がとぼけたアクセントなので、まともに喋られるとなおさら暗さが増長する。

セリーヌは調子が狂う。

「手など抜いてはおれん。こちらから争いを吹っ掛けるつもりもないが、明日、ファイアルの戦士らが襲撃を仕掛けてくるかもしれん、アイスラの者らが毒を撒くかもしれん、ドーラのゴーレムが国を踏み潰さんとも限らんし、旅のフーガが芸者に扮した暗殺者かもわからん。本来、そんな緊張のはびこる国なのだ、ライストは……」