CE-LI-NE

「通称『狭間』と言ってな、俺はコイツを通してあちこちを回ってる」

「その男を探してか?」

「そう」

不思議な話である。

セリーヌはつい、たとえ目の前に出来事があったとしても、剣呑な表情になった。

「お前……なにものだ?」

「俺か? ふ、はは」

とジンは笑う。完全完璧な、自嘲だった。

「〝千約〟。この世界とは違うとこじゃ、俺はそう呼ばれる。魔法使いだよ」

そのジンが言う『魔法使い』というのも、この世界の規格とは異なるのだろう。

彼女が開いているドアの白い空間が、鮮烈に物語っている。

彼女は、この世界とは違うところの常識で生きていると。

「ジン……なぜそんなことを私に教える?」

「ギブアンドテイクさ」

「……なにかの、交渉か」

ジンは頷く。

「言っただろう。貸しは返してもらう。お前は俺にでかい貸しがあるだろ。そこでだ。俺はもうこの世界に用はない。俺の探してる男がいる様子なけりゃ、痕跡もないからな」

「……それで?」

「それで、俺はとりあえず帰る」

胸ポケットから取り出された白い箱が、放られる。

受けとると、中身は空だった。

「タバコもなくなったんでね」