CE-LI-NE

ジンはあえて、無反応を決め込んでいるようだった。

「記憶喪失ならば、手当たり次第に情報を得ようとするだろう。が、お前には目的があった。記憶を取り戻す以外に目的のある記憶喪失者など、おかしな話だろう?」

少しの沈黙があり、窓から差し込む光の中で粒子が舞っていた。

「……明察だな。〝霜刃〟と称されるだけはあるよ、お前」

「今さら、褒め言葉にもならん。それにな、私にもわからんことがまだ二つある。お前はいったい何者で、なぜ今私のところへ来たのか?」

ジンはあの時、謎の力を見せていた。

ファイアル人でもないのに、炎を壁として顕現させた。

あの時はそこまでを見て意識が限界を迎えたが――

今ここに自分と彼女がいて、事件が解決したということは――ジンはあの少女をやり込めたのである。

ジンの力は得体が知れない。

なお理解できないのは、ジンが自分を救助後、逃亡したことである。

何者で、なぜ逃亡し、なぜ今現れたのか。

ジン・クサナギという女性は、宙を見た。

「あー、そう、だな……」

そして面倒くさそうに、頭を掻いた。