CE-LI-NE

車椅子のジョセフィーヌは、ドーラの貴族である。

そして黒猫・ジョセフィーヌと『あのルイス』を操っていた本人でもある。

セリーヌの視線に気付いたジョセフィーヌは、ゆっくりと首を傾けた。

「セリィ、もう少し、待って。あと一日か二日で、ルイスも作っ」

「やめてくれ」

思わず、顔を背けていた。読む気のない本をまた持ち上げる。

「頼む。作るなんて言い方は、やめてくれ」

「……うん」

それでも、作ること自体をやめてくれとは、言えなかった。

「傷も事実上は魔法で癒えている。明日には退院する」

「……うん」

それからセリーヌは、強引に本の世界へ入ろうとして――

活字という門番に食い止められ、誤って、夢の世界へ転がり落ちたのだった。

そんなセリーヌを、ジョセフィーヌはジョセフィーヌを撫でながら、静かに見つめる。

「おやすみなさい、セリィ」