窓の外は、生憎の曇天である。

体中に包帯を巻かれているセリーヌは、表紙の重たい本をどさりとベッドの上に落とした。

「暇だ……そうは思わんか、ジョセフィーヌ」

呼び掛けた先には、ひとりの少女がいる。

柔らかく波打った濃い栗色の髪、大きな同色の瞳。

楚々とした佇まいの少女は、車椅子の上でほんの少し、笑んだ。

「セリィ、いつも忙しい。今くらい、休んで?」

「ううむ、そうもいかんだろうに……」

唸りながら、セリーヌは先日までの事件を振り返る。

まだ、あれが終わって三日しか経っていないのだ。

話は、明かされてみれば簡単だった。

少年ギルの手により壊滅寸前となった暗黒集会が、軍団を作ろうとしていた。

その尖兵とされたのが、不幸にも地獄を味わった少女リリア。

結果として魔法陣の発動は男の死亡により失敗となり、リリアは――

「そんなに、心配しなくても」

「心配してはいない。気にかかるだけだ」

くすりと、ジョセフィーヌは笑う。

その膝には、ゴーレムペットの黒猫・ジョセフィーヌが乗っている。